ちょっと曖昧な、日本料理の種別
歴史的に、さまざまな国から影響を受けて育まれてきた日本料理。
使われる食材や調理法も幅があり、「和食」と「日本料理」ではニュアンスが異なるものの、伝統的な食文化としてユネスコ無形文化遺産に登録されています。
日本料理でいえば、「会席」や「懐石」と呼ばれるスタイルが最もなじみ深いかもしれません。
しかしどちらも「カイセキ」と読むため、同じ料理の表記違いのように思ってしまわないでしょうか(私はそう思い込んでいました)。
ですが両者は本来別個のもので、その目的すらも異なるものでした。
今回は、そこから派生した「点心」「松花堂弁当」を含め、これらの違いをざっくりと解説したいと思います!
会席
和食のレストランや割烹などで、コース料理として供される一般的なスタイルが「会席」です。
これは最初に「先付(さきづけ)」や「先八寸(さきはっすん)」などと呼ばれる、いわゆるオードブルが出され、一品ずつ順に「椀盛(わんもり)」や「造り」、「焼物」や「揚物」といった料理が続きます。
これはフレンチのコース料理と同じスタイルにあたりますね。
会席で特徴的なのは、ご飯と汁物・香の物で構成される「食事」が最後(水菓子・デザートを除く)に出される点にあります。
基本的にはお酒の供としてのメニュー構成とされ、ラストのご飯はまさしく「シメ」の風情ですね。
ちなみにフレンチですとメインディッシュはお肉かお魚のボリュームある料理ですが、厳密には日本料理にそれと同じポジションはありません。
強いていえば「椀盛」が該当するともされ、「真薯(しんじょ)」などの大ぶりな具と出汁の組み合わせには、そのお店の精髄が込められているといいます。
もう一つ余談ですが、「割烹(かっぽう)」とは「割=包丁技術」「烹=煮炊き」の意味で、お刺身をつくる技とおいしい出汁を引くことを表しているといいます。
懐石(茶懐石)
会席と同じ読み方ですが、「懐石」と書いた場合には本来、お茶事の前に供される食事を指します。
あくまでもお茶がメインであり、空腹時に濃茶を喫すると胃に負担がかかるため、その前に軽食でもてなすことが目的でした。
会席と大きく異なる点は、懐石では最初に「食事」が出されます。
ご飯・汁・向付(むこうづけ)の組み合わせが基本で、汁は味噌汁のことが多く、向付はあらかじめ調味を施した「造り」である場合が多いとされています。
これに椀盛や焼物などを加えた「一汁三菜」がベースとなり、追加料理の「預鉢(あずけばち)」や「強肴(しいざかな)」など、状況次第で組み合わせは変化します。
途中で「箸洗(はしあらい)」などと呼ばれる薄口の吸い物で口直しをし、山海の食材2品を盛りつけた「八寸(はっすん)」という肴で主客が盃を交わすこともあります。
最後に煎り米入りの白湯である「湯桶(ゆとう)」と香の物でしめ、メインイベントの茶事に進むというのがひとつのパターンです。
このように、懐石はお茶の前段階としての振る舞いであり、客同士が料理を取り回すなどの細かい作法が定められています。
※本当はご飯ひとつとっても、段階ごとに異なる炊き加減のものを出すなどさまざまなおもてなしの心遣いに満ちているのですが、詳細は割愛します。
点心
点心、というと中国料理の飲茶などで供される料理をイメージしますが、日本にもその名の料理が存在します。
その正体は上記の「懐石」を、いわばコンパクトな定食風にまとめたものといえます。
自由度が高いため絶対にこうだという定型があるわけではないようですが、「口取(くちとり)」などのように各種の料理を盛り合わせることが一般的です。
ご飯・焼物・八寸などをワンプレートにして、そこに小鉢や椀盛を添えるというスタイルもよく見られますね。
懐石ですと基本は白飯を供しますが、点心では混ぜご飯や炊き込みご飯、型抜きしたご飯などが多く使われることも特徴のひとつです。
正式な茶懐石よりも手軽な、ミニ懐石ともいえる料理が点心です。
松花堂弁当
松花堂弁当とは、十字の仕切りがあるお重などに料理を盛ったものを指します。
野外でいただくとは限らず、これも椀盛や小鉢が別添される場合が多いといえます。
仕切りは4つとは限らず、6つや9つなど豊かなバリエーションをもっています。
各仕切りごとにご飯や向付、八寸などが分けられており、これもミニ懐石の一種といえるでしょう。
ただし、場合によってはあえて仕切りを設けずに盛り合わせる方法もあるようです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
本式の茶懐石などは、茶道を修行していない限りはまず頂く機会はないかもしれませんね。
ですが、それぞれの意味合いや本来供される順などを知っておくと、さらに日本料理を楽しめるのではないでしょうか。
・懐石=ご飯が最初!
・会席=ご飯が最後!
と覚えておくと、まずは間違いないでしょう!
帯刀コロク:記
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